だから、さようならと言おうとしている

 
 気持ちが落ち着いたのかただ単に慣れただけなのか、どんな理由であの日々から抜け出すことができたのかは未だにわからないが、まるで2月の暗い暗い真冬の日々の翌日に、突然5月のやわらかな日差しの中に放り込まれたような戸惑いが続いた、あれは去年の春先のことだった。そして今、またあの暗い真冬の日々に戻ろうとしている。それはそれで構わないような気がしている。
 この数か月の間に起きた出来事は、やはり間違いだった。さようならと言ったとしても、特に誰かと会えなくなるわけでもなく、毎日は変わらずに進む。どんな決心も、いつもたやすく流されていく。だから、さようならと言おうとしている。