2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

深夜のフロントガラスの上にぽつりぽつりと雨粒が落ち始めたのに気がついたとき、運転手の声が聞こえた。ぼんやりしていたから何を言っているのかわからなかった。次に続いた言葉で、聞き取れなかった言葉をようやく理解する。「ああとうとう降ってきた」彼…

桜の死

勝てなければ負け。ドローはない。負けてしまえば本当に負けで、どう足掻いても勝者には勝てない。勝ち負けではないとあなたは言うだろうか。それでもそんなことはないんだ実際は。感情的になったら負け。多く好きになった方が負け。たぶん人形でいられたら…

入院中のひとに花を持っていったとき、ベッドの中の彼が「ああ…綺麗だなあ…。綺麗だ…」と噛みしめるようにつぶやくのを聞いた。そのときはじめて「花は綺麗なもの」ということが言語とともに記銘されたのだということを、何度も何度も思い出している。

嘘が嗤う

誰かを傷つけまいと嘘をついて自分が傷ついてしまうのは、「傷つけることでそのひとに嫌われる」というリスクを回避しようとした罰みたいなものなのかもしれない。本当のことを言ったときに誰かが受けたであろう、その痛みをひきうけることもできないくせに…