2012-01-01から1年間の記事一覧

信じたがる弱さと、信じる強さと

心臓の鼓動が時計の秒針のようにシーツを震わせている。 メールを送信するたびに送信済みフォルダに残ったメールを削除してゴミ箱も空にする。ゴミ箱が空になるたびに自分には発言権がないことを思い出す。 過去を変えることはできない。忘れることは可能だ…

数値

確かに非常に不安定な一年だったなと思うけれど、その次の一年も決して安定したものではなかったことに変わりはない。たぶん一年かけて不安定な状態が定着してしまったのだろう。並べた数値がそれを事実として突きつけている。あとはもう下るだけだ。元に戻…

言われなくても理屈ではちゃんと理解してる。でもどうしようもなく求めてしまう。わかってくれたらいいのにと思う。でもわかってもらえたところでやはりどうにもならないことを知っている。打開策を探していつもうまくいかなくて、結局何ひとつ変えられない…

その言葉がわたしだけに向けられたものであればいいのに

飛行機雲がほどけるのを眺めていた

今更どうすればよいのか、と言われれば何も言えなくなる。過去を変えることができないなんてことは知ってるし、だいたいそういうことが言いたいんじゃない。じゃあ何が言いたいと問われてもやはり何も言い返せない。どんなふうに言えばいいのかわからないか…

わたしたちに一体何が共有できるのだろう。そんなものがあったとして、けれどそれはきっとほんのわずかだ。 それでも、と続けようとするのは愚かだろうか。「それでも」の先にどんな文章が続くかによって、「愚かさ」は別の何かに変わるのだと思っている。 …

もはや惰性を以てしても前へ進むことができないから、動力としての焦燥を得るためだけに会いに行く。「モチベーションが」と誰かが言う。そんな言葉で言い表せるようなしっかりとしたものでもない、と言おうとしてやめた。 目に映るのは流れていく見知らぬ町…

ロックンロール

好きなものから離れるためには、飽きるか嫌悪するようになるまで(あるいはその両方の状態になるまで)、好きでいなければならないのだろうと思う。 「いろんな方からいろんな悩みが寄せられます。実は最近、それらの問題の多くに共通していることがあるんち…

どういうわけか、その川の合流点を分岐点だと思い込んでいた。 合流も分岐もさして変わりがないのだと言い聞かせている。

助手席

なんだか降って来そうですね、という声にそうですねと答えたものの、曇り空は明るく、隙間には薄い水色が見えた。そうですねと答えたわりには降りそうもないのになあと考えていると、フロントガラスの上に次々と雨粒が落ちてきて少し驚いた。高速道路を降り…

can you hear me?

何か少しでも形にしておけば、声は届くとでも思い込んでいたのだろう 何か少しでも形にしておけば、声は届くとでも思い込んでいるのだろう 声が届くということが、思い通りになることと同じだと思い込んでいるのだろう

海の底

路上。街灯も照らさぬ暗がりの中、携帯電話で楽しそうに話している人を見かける。 あなたの言葉には感情がない、と責めたくなる。でも実際はそうではないのだろう。あらゆる言葉に含まれている感情のどれくらいをわたしは認識しているのだろうか。 携帯電話…

誰かに怒りをぶつけるときは逃げ道を用意してあげなさい、と言われたことがある。それは必要なことなのかもしれないけれど、怒りが湧き上がるときにはそんなことを考える隙間などないだろう。怒りと憎しみが重なったときなら尚更だ。怒りが悲しみと重なった…

早足で歩く夜、空を見上げると雲の隙間に明るい光が見えたから、ねえ月が、と言おうとして口をつぐむ。地下へ潜る。先を急ぐ。地下へ、地下へ。電車がホームに入ってくる。その風に吹かれる瞬間、浅く息を吐く。 足を止めて月を眺めるには時間が足りない。い…

バランスとタイミング(または「穴があったら出たい」)

携帯電話からメールを送ったら、「メールボックスの容量が90%を超えたので、不要なメッセージを削除してゴミ箱を空にしてください」というメールが届いた。そうしないと古いメールから削除されるらしい。もらったメールが消えるの嫌で、自分から送ったメール…

waiting for the next storm of a teacup

あ、紫陽花、とカメラを向けた。それなのに、紫陽花を撮ったことに本当に気づいたのは、丸一日以上経ってからのことだった。一時期は見るのも辛かったはずなのに、いつの間にか、それくらいなんともなくなっていたようだ。 苦しさから脱するためには、別の、…

薄闇

眠れないまま朝になった。 失ったものはいずれ失われるものであり、それがいつどんなタイミングで訪れるのかによって悲しさや苦しさは変わるのだろうなとぼんやり考えている。痛みや負の感情ばかりが蓄積されて、もう何を持っていないのかを忘れてしまった。…

questions

誰かにとってとても大切な過去が、時間も場所も全部追い越して全くそれに関わっていない別の誰かを傷つける。おそらくは勝手に傷つくだけなのだろうけれど。逆はあるのだろうか。 見知らぬ人の背中がふと目に留まり、誰かのことを思い出す。思い出したのは、…

何もかもがどうでもよくなる一瞬がある。そのままどうでもよくなりきってしまえばいいのに、どうでもよくなるのは本当にほんの一瞬で、次の瞬間には何事もなかったかのように元に戻ってしまう。何だこの執着は。あさましい。

別に義務なんかどこにもなくて嫌ならさっさといなくなればいいだけの話なんだけどただもう疲れて何もしたくなくてどこにもいきたくなくてこうやってここにいる。気を悪くするといけないから内緒でなんて声をぼんやり聞きながら逆に腹立つし別に悪いことして…

ソング・オブ・ザ・ヒル, シング・オン・ザ・ヒル

丘の上を歩いていた。ぽっかりと空いた時間を埋めるためだけに歩いていた。隙間が空くことはわかっているけれど、わかっていてもいつも早くに家を出てしまう。隙間はほんの少しだけ埋まるはずだった。埋まっていたはずの隙間のことをぼんやり考えながら、た…

深夜のフロントガラスの上にぽつりぽつりと雨粒が落ち始めたのに気がついたとき、運転手の声が聞こえた。ぼんやりしていたから何を言っているのかわからなかった。次に続いた言葉で、聞き取れなかった言葉をようやく理解する。「ああとうとう降ってきた」彼…

桜の死

勝てなければ負け。ドローはない。負けてしまえば本当に負けで、どう足掻いても勝者には勝てない。勝ち負けではないとあなたは言うだろうか。それでもそんなことはないんだ実際は。感情的になったら負け。多く好きになった方が負け。たぶん人形でいられたら…

入院中のひとに花を持っていったとき、ベッドの中の彼が「ああ…綺麗だなあ…。綺麗だ…」と噛みしめるようにつぶやくのを聞いた。そのときはじめて「花は綺麗なもの」ということが言語とともに記銘されたのだということを、何度も何度も思い出している。

嘘が嗤う

誰かを傷つけまいと嘘をついて自分が傷ついてしまうのは、「傷つけることでそのひとに嫌われる」というリスクを回避しようとした罰みたいなものなのかもしれない。本当のことを言ったときに誰かが受けたであろう、その痛みをひきうけることもできないくせに…

嘘つき

閉ざされた部屋の中で強い風の音を聞いた。春が来て花も咲き始めたというのに、未だにひとりだけ雪の日の中にいた。こわいという小さな声は届いていただろうかと思う。届かなかっただろう。 遠く流れていくものをとどめたいと思うのは、それがとどまることの…

どこで線を引こうか

覚えていたいことは忘れてしまったことかもしれない

冬の地上に出たあとは狂った時間の中を歩いた。狂った時間の中を歩き続けて、とうとうほんとうに狂ってしまう。どれだけ言葉を探しても何ひとつ見つけることができないまま、深夜であるはずのファーストフード店の2階の窓から、道を一本隔てた隣の店を眺めて…

after the days of tokyo

東京のまちは随分明るくなったなと思う