2016-01-01から1年間の記事一覧

助手席で感じていた居心地の悪さが伝わったのかもしれないな、と思った。それならもっと早くに気づいてくれたら、とは言わないけれど。

髪を切ってもらっている間に、どういう訳かマニキュアを塗ることになった。何年ぶりかもわからないほど久しぶりに塗るマニキュアは、驚くべきことにゴールドのラメだ。ハンドクリームをさぼりまくっている荒れた手にはまるで似合わない。それでも一通り塗っ…

話が上手すぎる人はとりあえず警戒することにした。不愉快な思いも、あまり飲み込まないことにした。それでもなお、もやもやとした感情だけはしっかりと残る。 それで彼はなにをしたいのだろう、と考える。不愉快にさせたいのか、全く何も考えていないのか。…

どこまで行ってもどこにも行くことができない。12時が過ぎれば鳴らない電話を待ち、23時が近づけば届かないメールを待ってしまう。そのたびに、これでいいのだ、電話が鳴る必要がなければメールが届く必要もないのだと悲しく言い聞かせる。そして今度こそ逃…

僕は本当はずるいんだ、彼はそうつぶやいた。新幹線の改札まで見送って、最後に大きく手を振った。そのずるさが好きでした、と思うのは、表面しか見ていないからなのだろう。

話したいことを、そう考えるに至った経緯まで全て話したら、満足できるのだろうかと思う。顔を見て直接話して、あのときみたいにわんわん泣いて、そうしたら満足できたのだろうかと思う。電話の向こうでごめんねと謝罪されて、明るい声で「愚痴でも何でも、…

その最後のひとことがなければ、すぐにでも返事ができるのに

quit

あるひとつのことをやめることにした。だらだらと迷い続けて、決められずにいたけれど、思い切ってやめることにした。やめることを決めて、もうできないんだと思えばさびしいけれど、もうしなくていいんだと思えばほっとする。そして、近い将来を考えれば、…

明るく静かなテーブルの向こうの、長い指を眺めていた。手を伸ばせば届く距離にいるその人の声が、夢のように遠くに聞こえる。誰かのことを理解できるだなんて幻想なのだし、自分のことをわかってもらおうなんてこともただの願望でしかない。それだけわかっ…