オオカミの不在
うそつきといわれて、それは違うのだけれど、ある意味ではそれは正しい、と思う。相手がわたしに嘘をつかれて、そしてそれでひどく傷ついた結果「うそつき」と呼ばれたのだろうけれど、実際思い当たる節はない。あなたに対してわたしは何か嘘をついたかしら。いいえ。あなたは納得しないでしょうけれど。それならそれで仕方ない。いいよ、それで。それであなたの気が済むのなら。
ただ、ものすごく安っぽい言い方をすれば、わたし自身には何度も嘘をついた。事実と反することを事実だと自分に思い込ませて嘘を事実にすり替える方法が実は有効だと知っている。そういった意味でわたしはうそつきだ。それなら認めるよ。
オオカミが不在だ。はやく飢えきったオオカミをつれておいで。