いつも楽しそうにしている人たちを見ていると、随分遠いな、と思う。わたしだって笑うことはある。でも何か違うと思いながら笑っている。仕方なく笑うことも多い。本当にうれしくて笑うためには、どうしてもひとつ条件があった。
 悲しさや苦しさを持っていることにあまりにも慣れてしまって、手放せなくなってしまったのかもしれない。笑っている人たちをみて、戻れない、と思う。でもわたしが本当にそこにいたことがあったのかと問われると、自信がない。自信はないけど、たぶんそこにいたのだ。だからこんなにさびしい。
 つらいと声をあげることでその痛みを確かめる。まだ痛みはここにあるのだと。涙がぽたぽたと裸足の上に落ちる。助けてと声に出す。声はいつも弱々しく、かすれてしまう。声は届かないのだといつも思う。誰かに救ってもらいたいと願っている。そして、その誰かはたったひとりしかおらず、でもその誰かにもきっとできないのだとおもいながら、そんなことあるはずないのにと思いながら。声が届かないことを、救われないことを、たぶんどこかで願っている。