心拍数

 
 明け方、大きな背中に耳を当て、心臓の音を聞いていた。伝わってくるその鼓動が間違いなくそのひとのものであることを確かめるために、自分の手首の脈に触れる。このリズムがぴったり重なることが決してないように、わたしたちは同じものにはなれないのだと少し悲しくなった。
 それでも随分と安心したのだ。短い眠りに落ちても悪夢が訪れることはなかった。