上書き保存でも名前をつけて保存でもなく、消えない存在はただ消えないだけである。悲しいことは何もないのに、浴槽の中では涙がぽろぽろと流れた。どうしたら消えるのだろうと考える。
 なんでまだ生きているのなんで死なないのと何度でも言えばよかったのだ。もしそれが現実になったら少なくともこの世から実体は消えるし、だからといって別に後悔もしない。心の底から沸き上がってくるこんな感情は、憎悪でも怒りでもない、ただの自己愛なのだろう。
 アクセル全開で働き続けていると、少しの隙間を狙って負の感情が押し寄せる。さびしさに負けてメールを送ってしまう。あなたからメールが届くのがうれしいよと返信がくる。まだそう思ってもらえることにほっとしてしまう。なぜ私は強くなれないのだろうと後悔に苛まれる。話をすり替えて当たり障りのない返信をする。