クレープでもいきましょうよ

 雨の夜に髪を撫でられながらひとしきり泣いて、ほっとするような女にはなりたくなかった。誰もいなければいないでそれなりになんとかできるはずだった。でも誰かに寄りかかる時間が必要だと思ってしまった。呼び出すことができる立場でもないくせに、唯一思いつく相手を呼び出してそばにいてもらった。泣いてしまえと言われる前に既に涙が止まらなかった。私が落ち着くと彼は車を走らせた。他愛もない話をたくさんした。クレープ屋に行きたいけどおっさんひとりだと行きにくいから行けずにいると言うから、いつでもお伴しますと答えた。いつの間にか雨は止んでいた。出来過ぎだと思った。