深々と頭を下げさようならと何度振り切っても別れることができない別れがあれば、またねと手を振ったそれが本当の別れなってしまう別れもある。「そばにいて」と震えながら小さな声でしがみついたのに、それでも自分から離れて行かなければならない別れのことを考えて、やはり混乱している。
 少しずつでも準備をしなければならないのに、面倒だから全く進まない。ディスプレイに映し出される書きかけの文書をぼんやり眺める。どうしていいかわからないから全く進まないのだと話せば、隣に座ってあれやこれやと手伝ってくれる。なぜそんなに熱心に手伝ってくれるのか、理由は知っているから聞かないでいる。これでいいんだと思うしかない。遠ざかるばかりだ。