2011

 
 黒い濁流に押し流されていく町を、画面のこちら側で何度も見ていた。人で溢れかえる都市の駅に映像が切り替われば、そこには絶対に映らないであろうその人の姿だけを探した。結局は自分が満たされることだけを考えている。満たされることなどないと知りながら。無力さと愚かさを感じながら。
 過去も未来も、さして変わりがない。どこかへ行くことなんてできない。それでもまだ、誰かに会うことができるなどと信じてしまう。どこへでも行くことができると信じてしまう。届かない手を伸ばしてしまう。