ソング・オブ・ザ・ヒル, シング・オン・ザ・ヒル

 

 丘の上を歩いていた。ぽっかりと空いた時間を埋めるためだけに歩いていた。隙間が空くことはわかっているけれど、わかっていてもいつも早くに家を出てしまう。隙間はほんの少しだけ埋まるはずだった。埋まっていたはずの隙間のことをぼんやり考えながら、ただ隙間ではない時間に向けて歩くしかなかった。埋めても埋まらない隙間をどうやって。坂の途中で息を吐いた。
 その歌に歌われている場所を歩いていた。あの街も随分変わってしまったのだとセルフライナーノーツには記されていた。どんなふうに変わったのかは知らない。これからどんなふうに変わって行くのかも。わかるのは、その街は完成されることなく変わり続けるのだろうということだけだった。
 丘の上を歩いていた。丘を越え行こうよ、と小さく歌いながら。
 
 坂道には薄日が差していた。