もはや惰性を以てしても前へ進むことができないから、動力としての焦燥を得るためだけに会いに行く。「モチベーションが」と誰かが言う。そんな言葉で言い表せるようなしっかりとしたものでもない、と言おうとしてやめた。
 目に映るのは流れていく見知らぬ町の風景。夕闇が空を覆う。分厚い強化ガラスの外には、きっと気持ちのいい風が吹いている。
 高速で移動する乗り物から見える雲はどうしてあんなにも立体的なのだろう。単純なことだ。そんな風に運ばれていく時間でもなければ、ゆっくり空を見ることもないだけの話だ。