霧の中は視界約50mほどで、時折前方を走る車の赤いテールライトがぼんやりと光る。自分がどこにいるのかもわからない不安と、ほんの少しの安堵と。
 車を降りてもやはりそこは霧の中で、薄暗く白く肌寒い。滑りやすい湿った道を歩く。霧が晴れなければいいと考えてしまうのは、もうどこにも行きたくなかったからだ。もう少しあと少し。それでも時間は確実に過ぎていく。これからのことなんかわからない。あなたにはあなたの人生があるんだから、なんて言わないで、どうか。