青年

 

 一年ぶりの再会を果たし、喫茶店で小一時間話をした。
 僕の知り合いでまともなのはなみさんぐらいですよと彼は言った。何がまともで何がまともではないのだろう。みんないろいろあるよね、と春に誰かが言ったことをぼんやりと思い出していた。私はまともなのだろうか。自信がない。
 そうだ、さっき生まれてはじめて名刺を作ってもらったんです、よかったらもらってください、そう言って彼は真新しい名刺をくれた。素敵な名刺だね、と言うと、彼は少し照れたように笑った。
 大丈夫、10年後、君ならきっとかわいい嫁を見つけて結婚してるよ、と無責任なことを何度も言った。平坦な毎日を変えることができるのは自分自身だけだ。彼ならそれができるのではないかと思った。